認知症。今や日本では高齢者のうち、5人に1人が認知症患者だとされています。
少子高齢化が急激に進む日本はさらに認知症患者が増えると危惧されています。
ですが4種の認知症のうち約7割も占める病気、アルツハイマーの治療薬「レカネマブ」が政府に承認されました。
この記事ではレカネマブとは何かを分かりやすく解説しています。
アルツハイマーの概要と現状
アルツハイマーの症状と進行過程
アルツハイマーは脳に不要なたんぱく質が蓄積することで発症する病気です。
症状は軽度なものであれば迷子や判断力の低下が挙げられます。中度であれば家族や親しい人を忘れてしまう、記憶が曖昧になります。これらの症状は認知症と言われてぱっと思いつく症状でしょう。
しかし重度になるとそもそもコミュニケーションがとれなくなったり、けいれんの発作など、私たちの想像よりもかなり思い病気だということが分かります。
画像挿入(末期)
アルツハイマーは初期の軽度な症状であれば完治こそしないものの、十分に進行を遅らせることは可能です。
しかし軽度の症状である判断力の低下などは加齢による衰えからくるものだと自己判断してしまい、発見が遅れてしまうことがほとんどで、気づくころには中度、そして末期まで進行してしまう恐ろしい病気です。
アルツハイマーの現状と難しさ
アルツハイマーは日本でも多くの患者がいる病気ですがその治療法が確立されておらず、一度発症してしまったら完治できず症状を遅らせることしかできません。
先ほども言った通り軽度であれば症状を遅らせ、上手く付き合っていける場合もありますが、気づくのが困難です。
なので気づいたころには介護が必要なほど進行しており、介護が必要になるケースがほとんどです。
また、アルツハイマーは他の病気と違って介護人に大きな負担がかかる病気です。そのため介護で精神を病んでしまった介護人が患者を殺してしまう事件を多く発生しています。
治療法が確立されていない、介護人への負担、この2つがアルツハイマーをはじめとする認知症の難しさと言えるでしょう。
レカネマブの基本情報
レカネマブとは
レカネマブとは日本の製薬会社エーザイとアメリカの医薬品メーカーが共同開発した新薬で今まで完治不可能だったアルツハイマーの治療ができるようになった画期的な薬です。
レカネマブの登場による希望と期待
今回認証された新薬・レカネマブはこれまで進行を遅らせることしか出来なかったアルツハイマーを治療する薬として期待されています。
レカネマブの登場により世界で約6000万人もいるアルツハイマー患者を救える可能性が出たのです。
そんなレカネマブに世界中が注目しています。
レカネマブの仕組み
アルツハイマーは脳にアミロイドベータ(脳内にたまるゴミ)が蓄積されることによって発症します。それによって脳の働きが鈍くなることで記憶障害のような症状がでるのです。
これまでの薬は脳の活性化を促すような効果しかなく、進行を遅らせることしかできませんでした。
しかしレカネマブはアルツハイマーを引き起こす原因であるアミロイドベータを除去する効果が見られたのです。
これによって今までは一度発症したら治すことができなかったアルツハイマーを治すことができるようになりました。
レカネマブの革新的な効果と注目ポイント
レカネマブの従来の薬と違う点
これまでアルツハイマーをはじめとする認知症患者には主に4種の薬が処方されていました。それが「アリセプト」、「レミニール」、「イクセロン」、「メマリー」です。
これらは差異はあれどどれも記憶障害の緩和が期待できる効果でした。
しかしレカネマブはそアルツハイマーを引き起こす病原体そのものをやっつけるような薬ですね。
つまり従来の薬は水の流れを衰えさせるようなイメージ、レカネマブはそもそも水を取り除くようなイメージです。
それがレカネマブが従来の薬と決定的に違う点となっています。
レカネマブとアデュカヌマブとの違い
皆さんは「アデュカヌマブ」というレカネマブの他にアルツハイマーに効果がある薬をご存じですか?
レカネマブはアメリカのFDAに2023年1月に承認されましたが、その2年前、2021年にアデュカヌマブはアルツハイマーに対する新薬として承認されていたのです。
アデュカヌマブはレカネマブと同様にアルツハイマーを引き起こす原因物質であるアミロイドベータを減らす薬です。
アデュカヌマブは不溶性(水に溶けない)のアミロイドベータを除去する効果があるのに対し、レカネマブは水溶性(水に溶けやすい)のアミロイドベータ、すなわちより毒性の強いアミロイドベータを除去する効果が確認されています。
これが2つの薬の大きな違いですね。
しかしレカネマブと違いどうしてアデュカヌマブはニュースで大々的に報道されなかったのでしょうか?
実はアデュカヌマブは欧州や日本では承認されなかったのです。効果の疑問視やコストとメリットの不釣り合いさなどが原因でした。
なので今回承認されたレカネマブにはより大きな期待が寄せられています。
レカネマブの課題と懸念点
アルツハイマーの新薬として注目を集めるレカネマブですが、現時点では欠点や課題も残されています。
それが
・高コスト
・副作用
・使用できる人が限定される
という点です。
高コスト
レカネマブは新薬、それも治療困難だとされてきたアルツハイマーの薬なのでやはり使用するには多額のお金が必要です。
先に承認されたアメリカでは1年間に約380万円もかかります。日本は高額医療制度があるので少し抑え目の100万円~200万円程度になる見込みですが、それでも大金には変わりありません。
現在アルツハイマー患者に処方される薬の1つのアリセプトは1錠あたり100円~200円前後なのでその高さがより分かると思います。
副作用
薬には必ず副作用があります。車の酔い止め薬を飲むと眠くなったりするのがその代表です。
薬の効果が強くなるほど副作用の効果も比例します。抗がん剤を服用している人の髪の毛が抜け落ちしまう副作用はドラマなどでもよく見かけますよね。
レカネマブにもそういった副作用が存在します。レカネマブの場合は脳内出血が確認されています。
治験参加者のうち、17%が脳内出血が見られたとのこと。その中にはその脳出血が重篤になってしまい、亡くなった参加者が確認されたようです。
その人は血液凝固を阻害する薬を服用していたそうなので、それが原因だと考えられていますが、それでも不安な点だと言えます。
使用できる人が限定される
レカネマブはアルツハイマーを治療する薬として期待されていますが、すべての患者に効くわけではないのです。
軽度のアルツハイマーを発症している人にしか効果が確認されておらず、中度及び重度の患者にはまだ効果が確認されていません。
なのでアルツハイマーの早期発見が大事になってきます。
まとめ
いかがでしたか?世界中に多くの患者がいる認知症、その過半数を占めるアルツハイマーを治す薬「レカネマブ」が日本でも承認されました。
今はまだ発症初期の患者にしか使用できませんが、これから研究が進むとより重篤なステージの患者にも使用できるようになるかもしれませんね。
コメント